むち打ちの語源と意味・症状について

 今日は、交通事故で最も症状が多いとされる「むち打ち」について、その症状だけでなく、語源という視点から検討します。

  • 「むちうち」という言葉はアメリカで最初に使われたと言われている。
  • 「鞭打ち症」という言葉は、広辞苑にも収録されている。
  • むち打ちとは、追突時に、首から頭部にかけて鞭を打つような軌道で頚部が損傷したことに起因する諸症状を言う。
  • むち打ちとは、医学的な傷病名ではない。

むち打ちは奥が深い!

むちうちの語源

「むちうち」という言葉は、既に一般化している言葉ですね。主に交通事故に起因する症状として認知されています。
 追突された際の首から上の軌道が鞭を打つ時の軌道に似ていることからこのように呼ばれたものと推測されますが、最初に使われたのは実は日本ではありません。最も古くに見られる表現は、アメリカの医師がアメリカ西部整形外科学会で発表した「Whiplash injury of the neck」という言葉であると言われています。

「Whiplash」というのは、直訳すれば「むちひも」となりますが、「Whip+lash」つまり、鞭の中のグリップを除いた柔らかい部分という意味になるでしょう。
「Whiplash injury of the neck」を直訳すれば、「首がむちのようにしなることに起因する損傷」ということになるでしょうか。

 これが現在日本で「むちうち」と呼ばれる症状の語源になっているのかも知れませんね。

むち打ちの意味

 むち打ちは、広辞苑にも掲載されている概念ですが、交通事故で使う「むち打ち」という概念は「鞭打ち症」として整理されています。両方の意味を見ておきましょう。

むちうち

①鞭で打つこと。
②馬の体で、乗り手の鞭が当たる辺。
-出典『広辞苑 第六版 DVDROM版』

鞭打ち症

自動車で追突された時などに、躯幹が前に圧されるとともに頸部が衝撃的に後方に振れ、頸部の筋・靱帯・関節、時に脊髄が損傷することにより起こる症状。その振れ方が鞭の空振りに似るからいう。
過伸展損傷といわれるもので、痛み・めまい・耳鳴りなどがあり、しばしば症状は慢性化する。
-出典『広辞苑 第六版 DVDROM版』

 しかし、交通事故実務の現場においても、一般的にも「むち打ち」を「鞭打ち症」と表現する人は少なく、これらの意味はほぼ同義であると言っても過言ではないように思います。

むちうちの症状

 むち打ちは、先の広辞苑での解説にあったように、痛みやめまい、耳鳴りなどの症状があります。痛みとは、主に首や背中・腰の痛みの他、疼くような頭痛や片頭痛も症例として見られます。また、後遺障害に絡んで重要な症状として痺れがあります。相談時には上肢から手先の痺れを確認し、画像所見と整合性があるかどうかを慎重に検討する必要があります。

 また、痛みや痺れと言った症状の他に、不眠、疲労感、倦怠感等の自律神経失調症状が見られることもあり、これらの症状は「バレー・リュー症候群」と呼ばれています。

まとめ

 現実問題として、むち打ちは詐病を疑われやすい症状ではあります。しかし、交通事故に遭って「なにかしっくりこないな」と感じる方が多くいらっしゃるのもまた事実であり、これは日本に限ったことではありません。そのしっくりこないのが、心因性のものであるのか、実は頸部に損傷を受けていることに起因するものなのかの判断は容易ではありません。このような場合は、医師に診断を求められる一方、交通事故についての専門家からアドバイスを受けておかれることも有用な選択肢の一つと言えるでしょう。