今日は、インターネットで買い物をする際に知っておいて損はない法律知識に関するお話しです。
<ポイント>
・法律上、インターネットによる通信販売ではクーリングオフはできない。
・ショップがクーリングオフに相当する契約規定を掲載している場合には、その規定に基づき契約の解除を請求できる場合がある。
・インターネットの通信販売では、主に『消費者契約法』に当てはめて考えるとよい。
・『消費者契約法』は、事業者VS消費者の売買契約における消費者を保護する制度であり、ネットオークションで個人VS個人の場合適用はない。
1.インターネットでクーリングオフはできますか?
「インターネット通販でクーリングオフできるの?」
「ネットオークションでクーリングオフできるの?」
と言ったご質問をよく耳にします。
結論から申し上げますと、通信販売ではクーリングオフはできません。
2.何故クーリングオフできないのか?
『クーリングオフ』と言う制度は、その言葉のとおり、『冷静なって再考する』制度ですので、最初から冷静に検討してこちらから申込をしている通信販売においては、クーリングオフを認める必要がないのです。
一方、ショップ自体が独自に『購入後何日以内の返品に応じます』と記載している場合、当然その規定に従い返品を請求することは可能です。
3.インターネット通信販売に関係ある法律
では、インターネット通信販売では、どのような法律によって消費者は保護されるのでしょうか?
インターネット上に限らず、商品を売ったり買ったりすることは、『売買契約』と分類され、民法に定められています。
民法とは、市民相互の関係を規定する『一般法』と表現されることがあります。『一般法』とは『特別法』に対置される相対的な概念で、広く一般に適用される法律のことを意味します。
つまり、売買契約とは、民法という一般法に定められた契約の一形態となりますので、特約がなければ、トラブルは民法の定める処を基準に解決することになります。
しかし、専門的知識を有する事業者と素人に近い消費者が契約を行う場合、情報格差が原因となってトラブルになるケースが後を絶ちませんでした。
そこで、『消費者契約法』や『特定商取引法』によって事例毎に買主、消費者を守るための立法が行われました。これらの法律は、『一般法』に対置される概念として『特別法』と称されることがあります。
ここまでの内容のポイントは、「売買なら民法」ではなく、売買の事案によって自分がどういう保護を受けることができるのかを知っておくとよい、と言うことです。
4.消費者契約法とインターネット販売
そして、通信販売はクーリングオフの対象にはなりませんが、ご自身が消費者であって、取引の相手方が事業者(法人や個人は問いません。また、個人出品であっても、反復継続して大量に出品している方などは事業者とされる場合もあります)である場合の契約には、販売チャンネルが通信販売であっても消費者契約法の適用があります。
では、インターネット販売における消費者契約法の重要な論点についてお話ししましょう。
消費者契約法では、事業者がその契約を締結するためにした勧誘によって誤認をした次の場合につき、その契約の申込または承諾の意思表示を取り消すことができると定めています(インターネット契約関連のみ紹介します)。
・不実告知
重要事項について事実と異なることを告げられ、その事実と異なる内容を事実だと誤認してしまった場合→簡単に言うと、ウソの説明をされ、そのウソを本当と信じてしまった場合。
・断定的判断
契約対象となるモノについて、将来価値や将来の見返り、その他変動の不確実な事項について断定的判断を提供され、その断定的判断が確実であると誤認した場合→簡単に言うと、必ず値上がりすると言われた怪しい有価証券を、そのまま信じてしまった場合。
・不利益事実の不告知
重要事項につき消費者の利益となるものだけを述べ、不利益になることを故意に告げなかったため、不利益事実がないものと誤認した場合→簡単に言うと、高性能だがそれ故劣化が激しくすぐに製品寿命が来るのに、高性能である旨だけを告げ、早期劣化の件は触れなかった場合。
上記のようなケースに該当する場合、契約の申込または承諾を取り消すことができます。法文上は「申込または承諾の意思表示」の取消となっていますが、『契約を取り消すことができる』とほぼ同意に考えられます。
これはオークションでも適用がありますので、中古品であったとしても、ケースによっては売買を取り消すことができるかも知れません。
ただし、注意点があります。それは、不実告知であったり、不利益事実の不告知を証明していく責任は、消費者側にある、と言うことです。ですので、オークションの画面をプリントアウトしておかれるなど、証拠保全の対策をしておくことが大切です。
5.『ノークレーム・ノーリターン』のお話し
また、よくある『ノークレーム・ノーリターン』文言ですが、これも事業者VS一般消費者の売買では、消費者保護法により文言自体が無効とされます。ただし、無効だからといってどんな理由でも返品できる訳ではありません。事業者は特定商取引法に基づき「返品ができない場合」を記載していることになりますので、商品自体に問題がなければ返品は難しいでしょう。
6.まとめ
以上、インターネット販売における知っておいて損はない法律知識を概観しました。
チェックポイントは、まず相手の販売規約にクーリングオフに相当する制度が規定されているかどうか。されていない場合、相手が事業者かどうかで考えていくとよいでしょう。
ご参考になさってください。