今日は、旧民法時代において、離婚後300日以内に出生した子が入籍する戸籍についてのお話しです。相続調査においては、まだまだ旧民法時どうだったのかを考える必要がありますが、これはともすれば忘れがちな論点でもあります。「旧民法 離婚 戸籍」などというキーワードででこのページたどり着かれたあなたは超ラッキー。例外もありますが、多く見られるケースについて考えていきましょう。
- 婚姻により妻が夫の家に入った場合、離婚後300日以内に出生した子は、出生当時の父の家に入籍した。
- 入夫婚姻や婿養子縁組により、男性が妻の家に入籍した場合、離婚後300日以内に出生した子は、離婚当時父母がいた戸籍(すなわち、母方の戸籍)に入籍した。
相続調査と旧民法
相続が発生した場合、相続人を確定させる必要があります。相続人の確定は戸籍をたどっておこないます。不動産登記における相続手続では、被相続人(なくなられた方)が15歳頃の戸籍までをさかのぼって集めていきます。
昔は離婚なんて少なかったようなイメージがあるかも知れませんが、そんなことはありません。また、子が生まれてから正式に嫁と認められたと言われたりしますが、それを思わせる戸籍の記載も散見されます。
さらに、旧民法では実父からの「庶子出生届」という制度があり、それに認知的効力が付与されていたなど、現行法とは異なった制度もあるため、旧民法中時代に戸籍で起こっているイベントについては、しっかりと根拠を確認して、相続人をもれなく確定させる必要があります。
旧民法時に離婚されていた場合の子の入籍先
そこで、被相続人が旧民法時代に離婚されていた記録があった場合、「もし、婚姻中に懐胎していたら、その子はどの戸籍に入ったのだろうか?」という疑問が生じ得ます。これは、現行法で考えると、婚姻中の父母の戸籍に入籍することにはなりますが(民法第七百九十条但し書き)、旧法での取扱はどうなのでしょう?
結論から書くと、旧法での取扱も現行法とは変わりません。しかし、「旧法だから」とちゃんと条文にあたることは、実務的には重要なことだと私は思います。
第七百三十三条 子ハ父ノ家ニ入ル
これが、子の出生における入籍の大原則です。つまり、原則として、子は父が在籍している戸籍に入籍します。旧法ですので、父が筆頭者とは限りません。むしろ、筆頭者でない可能性の方が高いとも言えるでしょう。入籍した母が離婚によって除籍されている時でもこの原則は変わりませんから、父が死亡した場合の相続調査においては、離婚した女性の離婚後の戸籍を確認する必要はありません。
第七百三十四条 父カ子ノ出生前ニ離婚又ハ離縁ニ因リテ其家ヲ去リタルトキハ前条第一項ノ規定ハ懐胎ノ始ニ遡リテ之ヲ適用ス
しかし、旧法では、入夫婚姻、婿養子縁組が頻繁に行われていました。婿養子縁組で父が妻方の戸籍に入籍した後に離婚して除籍したケースにおいて、子は懐胎当時父が入籍していた戸籍、すなわち母方の戸籍に入籍することになります。つまり、父の相続調査で相続人を確定させるには、父の戸籍をたどっていけばよいだけのことになります(これは難しいケースではありませんね)。
まとめ
結果として、旧法当時に離婚の記録があった場合でも、上記のようなケースにおける被相続人の相続調査では、父母の婚姻解消時の戸籍を確認しておけば大丈夫ということになります。ただし、入夫婚姻・婿養子縁組後の父母の戸籍の動き方によっては、極めて希な例外が生じうる場合もありますのでご注意ください。