今日は、民生委員についてのお話しです。
生活困窮者が居宅内で死亡後に発見される事件が後を絶ちません。つい先日もさいたま市で3人が死亡、報道によると部屋に食材はなく、1円玉が数枚あっただけだっとのことです。
政治は、生活困窮者に対して支援を行える制度を整えています。しかし、制度を運用するのは人です。制度を趣旨に沿って運用できるかどうかは、我々国民一人一人の意識に依っている、と言っても過言ではありません。
民生委員は、民生委員法に基づいて厚生労働大臣から委嘱を受けて受任する、公務員です。我々のご近所さんにも民生委員さんはいらっしゃいますが、具体的な職務内容等を知る人は少ないのではないかと思います。
今日は、多くの方が「民生委員」的な視点で地域を見守れるようになれば、困窮死を防ぐ一つのセーフティネットとなるのではないか、という想いから、民生委員の職務について記述します。
1.民生委員の職務
民生委員の職務については、民生委員法第14条が定めています。
第14条 民生委員の職務は、次のとおりとする。
① 住民の生活状態を必要に応じ適切に把握しておくこと。
② 援助を必要とする者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと。
③ 援助を必要とする者が福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助を行うこと。
④ 社会福祉を目的とする事業を経営する者又は社会福祉に関する活動を行う者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること。
⑤ 社会福祉法 に定める福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)その他の関係行政機関の業務に協力すること。
2 民生委員は、前項の職務を行うほか、必要に応じて、住民の福祉の増進を図るための活動を行う。
また、民生委員は児童委員を兼ねていますので、児童虐待等について民生委員さんに相談することもできます。
この第14条は、民生委員の職務を定めた条文ではありますが、地域ぐるみで高齢者の見守り運動を行う場合の指針にもなりえます。実際、各地域で様々な取組が行われており、その効果が時々報道されています。
2.地域で他者を見守るという課題
孤独死や困窮死を防げたケースというのは、やはり人の連携や機転が上手く繋がっています。
一方、防げなかったケースでは、周囲の無関心や地域コミュニティの喪失という環境の問題だけでなく、ご本人が他者との接触を拒み、援助を拒否するケースも多いと言われています。
良い制度があって、良い人間が支援をしていても、ご本人にそれを受ける気持ちがなければ、困窮死を防ぐことはできません。この支援拒否というのは、地域社会が抱える大きな難題と言えるでしょう。
現代的な考え方からすれば、支援を拒み死に至ったとしたら、それは本人の行動の選択の結果であって、やむを得ないと言えるのかも知れません。しかし、私は、これだけモノがあり溢れた近代国家である日本において、困窮死はあってはならない、と思います。人は生まれた以上、生きることを放棄はできないし、生活保護対象であるなら、生活保護を申請するべきだ、と思うのです。
3.まとめ
今の世の中、優しさを表現するのにも勇気が必要な時代です。「自分ではちょっと」と思うことがあってもそれは当然だと私は思います。そんな時、民生委員さんに相談して連携したり、引き継いでもらったりすることで、地域の役に立つことがあるかも知れません。
本稿をお読み頂いて、「ご近所さんの様子を知っておくことも大切なんだね」、「困ったら民生委員さんという手もあるんだよね」と思って頂けたら幸いです。