今日は、会社が賃金を支払わないままに倒産してしまった場合に、その未払賃金を回収する制度のお話しです。
<ポイント>
・この制度を利用できるのは、倒産時6ヶ月から起算して2年の間(倒産後1年6ヶ月の間)に退職した労働者である(起算時詳細は後述)。
・未払賃金があった場合、要件によって立替払いを受けることができる。
・支払額は、未払賃金の8割だが、上限やその他の制限がある。
根拠法令
未払賃金立替制度は、厚生労働省の所管事業で、実際の窓口は、労働基準監督署及び独立行政法人労働者健康福祉機構になります。
根拠法令は、「賃金の支払の確保等に関する法律」です。
(未払賃金の立替払)
第七条 政府は、労働者災害補償保険の適用事業に該当する事業(労働保険の保険料の徴収等に関する法律 (昭和四十四年法律第八十四号)第八条 の規定の適用を受ける事業にあつては、同条 の規定の適用がないものとした場合における事業をいう。以下この条において同じ。)の事業主(厚生労働省令で定める期間以上の期間にわたつて当該事業を行つていたものに限る。)が破産手続開始の決定を受け、その他政令で定める事由に該当することとなつた場合において、当該事業に従事する労働者で政令で定める期間内に当該事業を退職したものに係る未払賃金(支払期日の経過後まだ支払われていない賃金をいう。以下この条及び次条において同じ。)があるときは、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百七十四条第一項 ただし書及び第二項 の規定にかかわらず、当該労働者(厚生労働省令で定める者にあつては、厚生労働省令で定めるところにより、未払賃金の額その他の事項について労働基準監督署長の確認を受けた者に限る。)の請求に基づき、当該未払賃金に係る債務のうち政令で定める範囲内のものを当該事業主に代わつて弁済するものとする。
この条文を受けて、政令である「賃金の支払の確保等に関する法律施行令」が具体的な内容を定めています。
制度の概要
具体的な制度の概要は、厚生労働省のホームページに記載されていますので、そちらをご確認頂くとわかりやすいでしょう。
制度を利用するための要件を分かりやすくまとめると以下のようになります。
1.会社が破産、特別清算、会社整理、民事再生、会社更生のうち何れかの手続を行う決定を受けたか、事実上の倒産状態にあること。
2.労働者が上記手続の申立時または事実上倒産状態である旨の認定申請を行った日を基準として6ヶ月前から2年間の間に退職していること。
大きな留意点が一つ。それは、この制度を利用できるのは「退職者」であるということです。民事再生法や会社更生法による手続が開始された場合でも、本手続においては「法律上の倒産」とされますが、この手続では会社は営業を停止することなく活動し続けます。その場合、現に勤務している労働者は、賃金が未払でもこの制度を利用することはできません。
以下、その他の概要を列記しておきます。
- ・制度が利用できるのは、破産手続開始の決定等がなされた日又は監督署長による事実上倒産状態である旨の認定日から2年以内です。
- ・対象となる賃金は、未払の定期賃金と退職金です(労働者が退職した日の6カ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来していること)。ボーナス及び2万円未満の未払賃金は対象外です。
- ・立替払の額は、未払賃金の8割です。また、年齢により3段階で上限額が設定されています。(賃金の支払の確保等に関する法律施行令第4条第1項)
制度利用に関する詳しいQ&Aが独立行政法人労働者福祉健康機構のホームページに掲載されています。
未払賃金立替払に関するQ&A – 独立行政法人労働者福祉健康機構のホームページ
倒産時の賃金確保
この制度は「立替」制度ですから、雇用者より全額支払ってもらうにこしたことはありません。
それについて、東京都のホームページに踏み込んだ内容が記載されていますので、リンクを掲載しておきます。
倒産時に給料や退職金を確保したい – TOKYOはたらくネット
このページは、労働者側に立った親切な内容で、回収の実態が書かれています。いざというときの参考になるでしょう。
倒産時の賃金債権回収は労働者にとっては大問題です。インターネットでも様々な情報が掲載されていますが、中には「??」と思えるものも少なくありません。
信頼できるソースから情報を収集し、セカンドオピニオンを取っておくことも忘れずに、迅速に行動したいものです。