戸籍事務手数料の根拠法令

 戸籍謄本は450円、除籍(原戸籍)謄本は750円で全国統一なのに、なんで住民票は各自治体によって値段が違うのでしょうか?

 今日は、行政手続の手数料に関するお話しです。

・地方公共団体の行政事務手数料は、条例で決まっている。

1.戸籍謄本と住民票請求の手数料

 お仕事でクライアント様の戸籍請求に携わっている方々ですと、戸籍が450円、除籍が750円というのは常識です。一方、住民票は各自治体によって値段がまちまちです。京都市では一通350円。私は、住民票で350円より高額の手数料を取っている自治体を知りません。
 京都は平成24年3月現在まだ住民票はB5判なのに・・・。学生さんも多いので、住民票の値段はもう少し下げてほしいですね。

2.手数料を決定する根拠法令

 地方公共団体の事務手数料については、地方自治法が定めています。

第二百二十八条  分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。この場合において、手数料について全国的に統一して定めることが特に必要と認められるものとして政令で定める事務(以下本項において「標準事務」という。)について手数料を徴収する場合においては、当該標準事務に係る事務のうち政令で定めるものにつき、政令で定める金額の手数料を徴収することを標準として条例を定めなければならない。
2  分担金、使用料、加入金及び手数料の徴収に関しては、次項に定めるものを除くほか、条例で五万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
3  詐欺その他不正の行為により、分担金、使用料、加入金又は手数料の徴収を免れた者については、条例でその徴収を免れた金額の五倍に相当する金額(当該五倍に相当する金額が五万円を超えないときは、五万円とする。)以下の過料を科する規定を設けることができる。

 戸籍事務の手数料も条例で定めるわけですが、その金額については政令の基準によらなければならない、と規定しています。
 その政令とは「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」です。

 この中に戸籍事務に関する事項があり、それぞれ金額が定められています。一方、住民票の事務は「標準事務」と定められていないため、各公共団体が条例で任意に設定できるというわけですね。

3.郵送請求の場合の注意点

 せっかくなので、もう少し。戸籍の請求先は本籍地の役所になりますが、人の移動が激しい現在、本籍地から離れて暮らしている人もたくさんいらっしゃることでしょう。
 それをいちいち本籍地まで取りに行くのは面倒この上ないことです。ですので、戸籍にかかわらず住民票も郵送で取り寄せることができます。現在では、多くの自治体が郵送請求の申請用紙をPDF形式でホームページに掲載していますので、それをダウンロードして郵送することになります。

 その際、手数料をどうするか、ということですが、通常は、郵便局で「小為替」を購入して同封して精算します。
 この小為替類の同封については、地方自治法施行令に規定があります。

(証券をもつてする歳入の納付)
第156条 地方自治法第231条の2第3項の規定により普通地方公共団体の歳入の納付に使用することができる証券は、次に掲げる証券で納付金額を超えないものに限る。
1.持参人払式の小切手等(小切手その他金銭の支払を目的とする有価証券であつて小切手と同程度の支払の確実性があるものとして総務大臣が指定するものをいう。以下この号において同じ。)又は会計管理者若しくは指定金融機関、指定代理金融機関、収納代理金融機関、若しくは収納事務取扱金融機関(以下この条において「会計管理者等」という。)を受取人とする小切手等で、手形交換所に加入している金融機関又は当該金融機関に手形交換を委託している金融機関を支払人とし、支払地が当該普通地方公共団体の長が定める区域内であつて、その権利の行使のため定められた期間内に支払のための提示又は支払の請求をすることができるもの
(以下省略)

 ここで大切なのは、「納付金額を超えないものに限る」ということです。換言すると「おつりを準備しなくていいようジャストの金額を封入しなさい」という意味です。

 小為替は、現在発行手数料が100円かかります。つまり、50円の小為替を作るのに100円かかるケースがありえます。
 頻繁に小為替を使うミナサマにおかれましては、1,000円の小為替を買って封入し、おつりを受け取るようにしていらっしゃるケースが数多くあることでしょう。しかし、これは、あくまで便宜的なものであって、本来的にはきちんとした額を送付すべきであることは知っておいた方がよいことでしょうね。

4.まとめ

 戸籍の手数料は地方公共団体が条例で決めているんだけど、地方自治法と政令で縛られている。政令で決められてるわけじゃないってこと、案外知られていませんので、バーでの口説き文句なんかに使って頂ければ幸いです。

 ・・・失敗しても責任は取れませんので、本当に使うならこのサイトの「免責事項」のチェックをお忘れなきよう。


 ところで、このブログで法律を引用する際は、漢数字を算用数字に変換して記載していました。法律は慣習として縦書きで作られますが、条は漢数字、項は算用数字、号は漢数字で、項を文中で第○項と引用する際は漢数字になります。横書きにしても条文は漢数字のままであるべきですが、読みやすさを考慮して算用数字に変換してきましたが、以後は原文のまま掲載します。