道路交通法と自転車の左側通行について

平成27年6月1日改正道路交通法の施行に伴い、自転車が通行すべき場所をまとめた記事を再度出稿しました。

路側帯の左側通行について

本稿は平成25年12月1日道路交通法の改正に伴い記事を修正しました。自転車がどこを走ればいいのかに手っ取り早く要点をご覧になりたい皆様のために、まとめを先に記載しておきます。ご参考になさってください。

自転車通行場所のまとめ

自転車は、歩道以外では左側走行が原則となる。

  • 自転車は、自転車道があればそこを通行しなければならない。
  • 自転車は、車道を通行できる。
  • 自転車が車道を通行する場合、左側端に寄って通行しなければならない。
  • 自転車は、一定の場合歩道を通行できるが、歩道に自転車通行帯があれば、自転車通行帯を通らなければならない。
  • 自転車が歩道を通行する場合、車道寄りを通行しなければならない。
  • 自転車は、禁止表示がない限り、路側帯を通行できる。
  • 自転車が通行可能な路側帯を走行する場合、道路の左側部分に設けられた路側帯を通行しなければならない。

 一方通行の道路の場合、路側帯は基本的に進行方向の右側に設けられています。
 一方通行の道路を自転車で走行する際、その一方通行に従って走行する場合は道路の左側端を走行すべきであると考えます(私見)。また、一方通行の道路が逆走可能であって、逆走する時は、左側に路側帯があることになるので、その場合は路側帯を通行することができるものと考えます(私見)。

平成25年12月1日道路交通法の改正点

 平成25年12月1日、改正道路交通法が施行されました。
 道路の路側帯の左側通行について文言が追加されていますが、これはどういうことでしょうか。

路側帯の左側通行について

 こうやって見ると簡単に分かりますね。道路の両端に路側帯がある場合、その左側にある路側帯を通行できますよ、と言うことです。
 改正前は、車の進行方向に対して、路側帯内であれば逆走することが可能でした。けれど、路側帯をはみ出すこともしばしばで、同じく左側端を走行しているバイクとの接触など、危険きわまりなかった。今回の改正のポイントは、上のような道路では「左側を走りなさいよ」ということを徹底するための改正である、と言えるでしょう。

 では、この道路で路側帯を通行しない場合、自転車はどこを通行すればいいのでしょうか。
 バイクのように道路の進行方向左端側を通行する訳ですね(この解釈については道路交通法の文言上疑義がありますが、ここでは触れません)。

道路交通法における自転車

 道路交通法では、第二条で用語を定義しており、その中で自転車は次のように概念されています。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
【第一号乃至第七号省略】
八  車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。
【第九号及び第十号省略】
十一  軽車両 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう。
十一の二  自転車 ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のもの(人の力を補うため原動機を用いるものであつて、内閣府令で定める基準に該当するものを含む。)をいう。
【以下省略】

<要旨>
道路交通法上、自転車は軽車両であり、車両である。

 上記のとおり、自転車そのものの概念が定義されており、その自転車は軽車両であるとされ、さらに軽車両は車両であると定義されています。

 つまり、自転車は、道路交通法において、軽車両であり、車両であるということになります。

自転車走行はどこを通行すべきか。

 自転車の通行すべき場所について、道路交通法から考えます。まず、自転車について特則が定められている条文をチェックしましょう。

(自転車道の通行区分)
第六十三条の三  車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する二輪又は三輪の自転車で、他の車両を牽引していないもの(以下この節において「普通自転車」という。)は、自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。

(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四  普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。
一  道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二  当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。
三  前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
2  前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。

<要旨>
・自転車道がある時は、自転車道を通行しなければならない。
・自転車は、一定の場合に歩道を通行することができる。
・歩道を走る場合、自転車は車道よりを徐行しなければならない。
・歩道に普通自転車通行指定部分がある場合、その指定部分を徐行しなければならない。

 長い条文ですが、一つずつ見ていきましょう。
 まず、第六三条の三では、自転車道が設けられている時は、原則として自転車道を通行しなければならないと定められています。

 次に、車道の通行を定めた第一七条の特則として、一定の場合に歩道の通行を認めています。
 そして、これがややこしい処なんですが、歩道を走る時は、車道よりの部分を走ることが定められています。
 さらに、歩道に自転車通行帯がある場合は、その通行帯を通行しなければならないことになっています。

自転車道や歩道を通行しない場合、自転車はどこを走ればいい?

 次に、自転車道や歩道を通行しない場合、自転車はどこを走ればいいのか検討します。

(通行区分)
第十七条  車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第四十七条第三項若しくは第四十八条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
【第二号及び第三号省略】
4  車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
5  車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下「右側部分」という。)にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。この場合において、車両は、第一号に掲げる場合を除き、そのはみ出し方ができるだけ少なくなるようにしなければならない。
一  当該道路が一方通行(道路における車両の通行につき一定の方向にする通行が禁止されていることをいう。以下同じ。)となつているとき。
二  当該道路の左側部分の幅員が当該車両の通行のため十分なものでないとき。
三  当該車両が道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分を通行することができないとき。
【以下省略】

(軽車両の路側帯通行)
第十七条の二  軽車両は、前条第一項の規定にかかわらず、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、道路の左側部分に設けられた路側帯(軽車両の通行を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたものを除く。)を通行することができる。

(左側寄り通行等)
第十八条  車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
2  車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。

<要旨>
・自転車は、車道も路側帯も通行することができる。
・自転車は、道路の左側端に寄って通行しなければならない。
・自転車は、路側帯を通行する場合、進行方向左側の路側帯を通行しなければならない(平成25年12月1日改正)

 車両は原則として車道を通行しなければなりません。これは当たり前のことですね。そして、車道を通行する際にも、左側を走行しなければならないことが定められています(第十七条第四号・十八条)。そして、軽車両は道路の左側端に寄って通行することが求められています。
自動車は左側通行が原則です

 次に、自転車は軽車両となりますので、路側帯を通行することがでます。これも当たり前の話しですね。

自転車は一方通行を逆走できるのか

 さて、自転車は車両ですので、一方通行の標識があれば、当然それに従う必要があります。ところが、自転車で一方通行なんて意識することはほとんどないでしょう。それにもちゃんと根拠があります。

自転車を除く一方通行標識

 そうです。「自転車を除く」と明示されているのですね。

条文による当てはめ

 これを総合するととても複雑になりますので、条文のエッセンスを抽出してまとめてみましょう。

  • 自転車は、自転車道があるときは、原則として自転車道を通行しなければならない。
  • 自転車道がない場合、自転車は車道を通行するのが原則となる。
  • 自転車は、路側帯が通行可能な場合には、路側帯を通行でき、車道を通行するか路側帯を通行するかは選択的となる。
  • 自転車が路側帯を通行する場合、道路左側部分の路側帯を通行する。
  • 自転車は、歩道が通行可能な場合や一定の場合には、歩道を通行することができ、車道を通行するか歩道を通行するかは選択的となる。
  • 自転車が歩道を通行する場合、道路寄りを通行する。

 これをさらにまとめて通行場所を考えると、次のようになります。

  • 自転車道を通行する場合→自転車道の左側を通行する。
  • 車道を通行する場合→車道の左側を通行する。
  • 路側帯を通行する場合→道路左側の路側帯のうち、道路に近い側を通行する。(第六三条の四第2項類推)
  • 歩道を通行する場合→歩道のうち、道路に近い側を通行する。

 自転車で走行していると、向かって走ってくる自転車をよけるのに相手と動きが一緒になってしまい、ハンドルを「カクカク」して結局足を着くことがありますよね。当初の本稿は、その「カクカク防止法」を考えるのが趣旨でした。「みんなが左に避ければカクカクはなくなる」というのが結論でしたが、改正道路交通法の施行に伴いアクセスが増加したことから、記事の性質を変更し、自転車の走行部分にフォーカスした内容に再編しました。