駐車違反時の反則金支払いについての検討

 駐車違反でステッカーを貼られると、反則金を支払わなければなりません。また、違反点数を加点されることになります。
 しかし、知られているように、違反者自らが支払わない場合、使用者(車検証に「使用者」として登録されている名義人)が代わって支払うと、運転者への点数の加点はありません。

 この件について、お客様から「本来的にはどちらが払うべきなのか?」と尋ねられました。今日は、この「駐車違反時の反則金は、そもそも誰が払うべきなのか?」について検討します。

・放置駐車違反の反則金は、原則として反則者が支払うべきである。
・違反者が30日以内に支払うより、使用者が支払う方が反則金は高くつく。

1.根拠法令

第五十一条の四  警察署長は、警察官等に、違法駐車と認められる場合における車両(軽車両にあつては、牽引されるための構造及び装置を有し、かつ、車両総重量(道路運送車両法第四十条第三号 の車両総重量をいう。)が七百五十キログラムを超えるもの(以下「重被牽引車」という。)に限る。以下この条において同じ。)であつて、その運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態にあるもの(以下「放置車両」という。)の確認をさせ、内閣府令で定めるところにより、当該確認をした旨及び当該車両に係る違法駐車行為をした者について第四項ただし書に規定する場合に該当しないときは同項本文の規定により当該車両の使用者が放置違反金の納付を命ぜられることがある旨を告知する標章を当該車両の見やすい箇所に取り付けさせることができる。
(第2項第3項省略)
4  前項の規定による報告を受けた公安委員会は、当該報告に係る車両を放置車両と認めるときは、当該車両の使用者に対し、放置違反金の納付を命ずることができる。ただし、第一項の規定により当該車両に標章が取り付けられた日の翌日から起算して三十日以内に、当該車両に係る違法駐車行為をした者が当該違法駐車行為について第百二十八条第一項の規定による反則金の納付をした場合又は当該違法駐車行為に係る事件について公訴を提起され、若しくは家庭裁判所の審判に付された場合は、この限りでない。
(第5項以下省略)

 長い条文ですが、書かれていることを、突き詰めて要約すると以下のとおりとなります。

「反則者が払わない場合は、使用者が放置違反金を支払うことになりますよ」

 つまり、第一次的には、反則者が支払うべきであって、使用者への納付命令は補充的な制度であると言えるでしょう。

 反則行為については『第九章 反則行為に関する処理手続の特例』に詳しく定められていますが、第127条で「反則者に対し反則金の納付を通告する」旨が定められていますので、ここからも、反則者が支払うべきであることが読みとれます。

2.反則者が支払わない場合

 反則者が支払わない場合でかつ公訴もされていない場合、車の所有者は、使用者(所有者)としての責任を負うことになります。弁明の機会が与えられますが、「救急搬送」とか「腹痛」などと言う理由で弁明が認められることはまずないと言えます。
 弁明しても認められなければ反則金を支払わなければなりません。そして、それは反則者が支払うべき反則金よりも高額になります。

 また、仮に支払わなければ、次回の車検を通すことができない、と言うペナルティがあります。

 一方、反則者は、使用者が支払ってくれると、点数の加点を免れることができます。

 なお、たとえばリース会社からベンツをリースしている医師が、友人に車を運転してもらっている時に駐車違反でステッカーを貼られた場合、友人が払わなければ、納付命令を受けるのは医師であってリース会社ではありません。
 この場合、ベンツの所有者はリース会社ですが、自動車検査証の「使用者」欄には医師の住所氏名が記載されているはずです。
 「使用者」が責任を負うとは、こういう意味です。

3.悪質な車両へのペナルティ

 行政処分点数が加点されないからと言って、同じ車が何度も駐車違反を繰り返すことが想定されますので、そのような場合の規定が設けられています。

 すなわち、ステッカーを貼られた日を起算日として、過去6ヶ月以内に納付命令を3回受けている車両については、車両の使用が制限されることになります。

 制限期間は、普通自動車で2ヶ月、二輪と小型特殊自動車で1ヶ月です。

 さらに、ステッカーを貼られた日を起算日として、過去1年以内に既に1回この使用制限措置を受けていた場合、前述の「納付命令3回」が「2回」になります。過去1年以内に使用制限を2回以上受けていた場合、前述の「納付命令3回」は1回となり、過去1年内に使用制限を受けている場合、要件が厳しくなっています。

3.まとめ

・反則者が支払う場合:反則者は財布に打撃を受け、行政処分の点数が加点されるが、車の使用者と車はなんともならない。
・車の使用者が支払う場合:反則者はなんともならない。使用者は財布に打撃を受けることになる。さらに、車には、反則金を支払ってもらわなければ車検に通らない、また、納付命令を度々受けている場合は使用制限のペナルティを受ける、と言う不利益が課せられる。

 仕事中に駐車違反をしてしまった時は、誰がお金を支払うのかが問題になることが多いようですが、難しい問題ですね。
 京都の西陣界隈は道幅が狭く、電柱が「何故ここにあるんだ!!」と叫びたくなるような場所に立っているのが普通です。私の車は擦り傷だらけで、路駐されるとホントに迷惑なので、自分もしないようにはしています。

 Have a good weekend!!!

※ステッカーが貼られるような駐車違反は、道路交通法の定義では「放置駐車違反」と概念されていますが、本稿は反則金の納付をトピックにしていましたので、「駐車違反」と表現しています。