相続登記時における不在住・不在籍証明について(その2)

 今日は、昨日のブログ記事「相続手続時に必要な不在住・不在籍証明について」の続きです。

昨日のまとめ
・相続手続において、死亡記載のある戸籍を添付しても、住所が記載されていないために最後の住所を証する書面が必要となる場合がある(例えば相続登記)。
・相手方の把握している住所(例えば登記記録上の住所)と、被相続人の最後の住所が違うケース、分かりやすく言うと、被相続人が転居しているケースでは、相手方の把握している住所から最後の住所までの履歴を確認できる資料を添付しなければならない。

1.不在住証明・不在籍証明

 前回検討したように、相手方の把握している住所と被相続人の最後の住所が違う場合、その履歴を証する書面の提出を求められる場合があります。登記では必ず必要になります。
 この際、保存期間が経過していると、住民票の除票や戸籍の附票を取得することはできません。そこで、「不在住証明」「不在籍証明」の出番がやってきます。

 不在住証明は、被証明者の住所氏名を書いて申請すると「その住所にその氏名の人の住民登録はありません」と言うことを証明してくれる書面です。

 また、不在籍証明は、同じく「その場所を本籍地とするその氏名の人はいません」と言うことを証明してくれる書面です。

 例えで考えます。
 登記記録上、住所がA市B町1番地の山田太郎さんが亡くなって、山田さんの不動産に相続の登記を申請するとします。ところが、山田さんはその後転居を繰り返し、最終的にX市Y町2番地に住んでいた。

 この時、法務局は、戸籍類と住民票除票などでA市B町1番地の山田太郎さんが死亡していたことを確認しようとします。
 ところが、住民票除票の住所はX市Y町2番地だし、前住所もつながらない。
 そうなると、法務局としては、「実はA市B町1番地の山田太郎さんはご存命じゃないの?」とも考えられるわけです。
 ですので、「A市B町1番地に山田太郎さんの住民登録はない」と言う不在住証明を添付して、現在申請している山田太郎さんが、昔はA市B町1番地に住んでいて、不動産を持っていた山田さんと同一人物なんだよ、と言うことを訴えるわけです。
 では、不在籍証明はどうして必要なのでしょうか?
 これは、正直私にもよく分かりません。しかし、不在住証明を添付する際は不在籍証明もセットで添付するのが原則でした(不在籍証明を添付せずに登記が通った記憶もあります)。
 考えられる理由の一つとして、大昔の登記には、住民票の添付は必要とされておらず、
本籍地で登記申請をした人もいらっしゃったと言う話しです。
 ですので、登記した時に、既に住民票の添付が必要だった時代の登記名義人については、不在籍証明は要らないと考えられる一方、住民票の添付が必要なかった時代の登記については、不在籍証明を添付する理由があると思われます。

 なお、実際の登記手続においては、被相続人の住所の連絡がつかない時、すなわち、不在住証明を添付しなければならないケースにおいては、登記名義人の権利証があれば権利証を添付し、権利証がなければ相続人全員から、「この不動産は、今回我々が申請している被相続人の所有であったことに相違ない」旨を記載した書面を提出することになります。
 これは、京都付近では「上申書」と呼ばれており、実印の押印と印鑑証明書の添付が必要となります。

2.不在住証明・不在籍証明の法的根拠

 不在住証明・不在籍証明を直接に規定した法律はありません。不在住証明は、役所によっては「不在証明」と呼んでいる場合もあり、その曖昧さが法的根拠の薄弱さを物語っていると言えるでしょう。
 京都市の場合、不在証明、不在籍証明、身分証明は同一の申請用紙になっています。これを『行政証明交付申請書』と呼んでいます。

 私も全ての文献にあたった訳ではありませんが、私の理解においては、地方知事法第2条第2項及び第8項に規定されている、『自治事務』に該当するのではないかと思います。

 行政証明においては、新宿区の内部通達が公開されており、非常に参考になりますので、リンクを掲載しておきます。

一般行政証明の取扱基準について(依命通達)の全部改正について – Reiki-Base インターネット版

 この新宿の通達では、一般行政証明発行のメリット、デメリット、そして「落とし所」としての、証明事務の範囲が明確に記載されており、参考になります。

3.まとめ

 以上、二日間にわたり、相続登記と不在住・不在籍証明について検討しました。
 不在住証明・不在籍証明は、登記以外にも郵便局での手続等に必要となるケースが考えられます。
 当初は、サクッと簡単にまとめるつもりが、ちょっと長い文章になってしまいました。
 行政証明の法的根拠なんて知っていても得にはなりませんが、バーで同伴者を口説く際にでも使って頂けたら幸いです。

 口説き文句に使うなら、「免責事項」のチェックをお忘れなきよう。