今日は、会社の商号と俗字に関するお話しです。
俗字とは、一般的に、平仮名や漢字の異字体を呼びます。漢字の異字体のみを「俗字」と定義している文面も見受けられますが、実務的には平仮名の俗字もよく目にします。
さて、会社の商号に俗字を用いて登記することができるのでしょうか?
この答えは、結論としては次のようになります。
「使いたい字が登記できるかどうか管轄法務局に確認して下さい」
まず、氏名の場合で私が実際に経験した事例です。
現在、氏に俗字が使われている取締役の変更登記を、俗字のままの字体で登記事項を記載し登記申請したとすれば、京都管内では正字に引き直して登記されます。
「吉」の「士」が「土」になっている「吉田」さん3名が20年以上取締役に就いていたとします。
ブック式の登記簿からコンピュータへ移記される際は、「土」の「吉」で登記されていました。
しかし、その後一名が退任し、息子の「吉田」さんが就任された際、同じように「土」の「吉」で登記申請されると、登記が「士」の「吉」で記載されました。法務局へ確認すると、「役員重任の時などは引き直さずそのまま登記するが、新しく就任される場合は正字で引き直す、と言う通達通りの取扱をする」との回答がありました。
次に、今回のテーマ、商号です。
商号も、同じように、俗字の場合は正字で引き直して記録するものとされています。
この解説によれば、「俗字の場合は正字によって記録する」とされていますので、俗字で登記できる余地はないようにも思われます。
ところが、最近、実際に、商号に俗字を用いるかも知れないと言う案件があったため法務局に確認した処、「登録している文字なら使える場合もあるので、一概に答えることはできない。個別に確認して欲しい」という趣旨の回答がありました。
この回答は、一担当者との電話でのやりとりですので、当該法務局公式の見解ではないでしょうし、実際、確認したところで全て「正字で登記になります」と回答されるかも知れません。
会社設立後の登記申請であれば、俗字のまま申請して記載は法務局に従う、と言う手法もありえるかも知れません。しかし、会社設立時おいては、定款認証を受けた商号と設立登記時の商号の文字が異なっているのは、公示上あまり好ましい状態とは言えない、と私は考えます。
お客様の中には、思い入れがあって俗字を使用することを望まれるケースもあることでしょう。ですので、私は登記できるかどうか法務局に確認し、お客様にご説明するようにしています。
俗字の取扱については、法務局管轄によって異なった取扱をしている印象を受けるので、あまり参考事例にはならないかも知れませんが、私の結論としては、「設立時、商号に俗字を使うなら法務局に登記できるかどうか事前に確認する方がベター」と言うことになります。ご参考になさって下さい。