「知的資産経営」…聞き慣れない言葉ですが、経済産業省が推進する新しい経営モデルとして徐々に認知されています。
この「知的資産経営」とは、当職の解釈で解説すると、「容易に数値化することのできない経営資源を可視化し、有効利用できるよう再構築して経営に活かす取り組み」という感じです。
「容易に数値化できない経営資源」とは、すなわち「モノ」「カネ」以外で企業体が有する資産ということになるでしょう。
歴史、人脈、技術力…そんな数値に換算できない資産を駆使して経営に活かそう、これが知的資産経営の取り組みです。京都では「知的資産経営」を「知恵の経営」と呼び換え、知的資産経営を浸透させるべくナビゲーターを育成しており、昨日その研修を受けてきました。
「歴史、人脈、技術力を駆使して経営に活かす」
……。
そんなことやってるっちゅうねん!!!
多くの方はそう思われるのではないでしょうか。そう、これは経営者なら誰もが実践していることです。けれど、実はこの「知恵の経営」には、やはり意味はあるのです。
つまり、「いつもやっていることをもう一度見直す」効果です。改めて自己分析してみると、今まで気付かなかった自社のストロングポイントが見えてくるかも知れません。単体では非力な知的資産を複数掛け合わせることにより、大きなパワーになるかも知れません。
「やってるっちゅうねんっっっ」では、進歩は難しい。自分を省み、新しい何かを己の中に探してこそ、人は進歩するのかも知れない。研修を聞きながらそんなことを思いました。
ところで、この「知的資産経営」の実践方法には、特段の手法や理論がある訳ではありません。経済産業省では、自分を見直すと言う過程を書面化する「知的資産経営レポート」の開示を推奨していますが、このレポートを作ったからと言って、一気に顧客が増える訳でも融資枠が拡大する訳でもありません。「知的資産」を集約した「知的資産レポート」もまた広義の「知的資産」に組み込まれ、結局はそれを有効に活用する「経営手腕」が求められるのです。
京都府では、「知恵の経営報告書」の評価・認証制度を行っており、認証を受けた事業主は、融資申込ができる等のインセンティブを埋め込んでいます。
経営報告書の作成は、やはり相当な分析・構築能力と表現力が必要であり、時間と人のチカラを要します。
「この厳しい時代にそんなこと」と考えてしまうかも知れませんが、逆にまた、報告書を出しているのはこの不況下においても活力を維持している企業体であり、「この厳しい時代だからこそ」という視点も成り立ちえるようです。
この「知的資産経営」自体は素晴らしいコンセプトだと思います。が、地方の中小企業が疲弊している現在、やはり浸透を図るためには、融資枠や自治体webでのPR、報告書のコンテストなど、企業にとって魅力のあるインセンティブを積極的に埋め込むことが必要ではないかと感じました。