今日は、私道についてのお話しです。特に、私道と通行権についてフォーカスしてお話しします。
<ポイント>
・私道の通行が制限されるかどうかは、簡単にはわからない。
・認定道路は、誰もが通行できる。
1.『私道』とは
私道とは、公道に対置される概念です。公道とは、厳密に法律で定義された概念ではありません。一般的には、国や地方公共団体が所有・或いは管理している道路であると言えます。では、私道はどう定義すればよいのでしょうか?
私道とは、その土地の所有者や用益権者が私人(法人を含む)であると説明されることがありますが、私はそうは考えません。以下、事例で考えましょう。
代表的な私道としては、路地を挙げることができます。公道に接道して奥へ伸びる一本の路地。そこに何軒かの家を建てる際、一番奥の家もその路地を堂々と通行できるように、路地部分の所有権を持分で取得します。同様に、路地に面する家の所有者がそれぞれ路地部分の持分取得して、共有することにより、通行権を確保するようなケースは、典型的な「私道」と言えるでしょう。
一方で、所有者に着目して、民間所有の道路を私道と定義してしまうと、一見『私道』とは思えない私道がたくさん存在することも事実です。京都市には、そのような道路がとりわけ多数あるように思えます。その代表的な例が京都市北区紫野中柏野町あたりの南北の通りでしょう。あみだくじのように細い道路が何本も通っていますが、公図で確認すると、それらがほとんど土地の一部を「私道負担」として道路の用に供していることがわかります。そして、その道は、道路に面している所有者だけではなく、誰もが普通に行き来しています。何より、私人が所有している道路であっても、市町村が道路として認定することができるのです。
2.『認定道路』と言う概念
認定道路とは、一般に国又は地方自治体が「道路法」に基づいて認定及び維持管理をしている道路のことを指します。道路法に「認定道路」なる文言字体は出てきませんが、道路の認定についての定めがあることから、一般的に認定を受けた道路を「認定道路」と呼んでいます。
道路法で道路と認定を受けた道路は、当然に道路法の適用を受けるわけですが、同法第4条は次のように定めています。
第4条 道路を構成する敷地、支壁その他の物件については、私権を行使することができない。但し、所有権を移転し、又は抵当権を設定し、若しくは移転することを妨げない。
つまり、道路法の認定を受けた道路は、私権の制限を受け、勝手に通せんぼしたりはできなくなってしまうのです。
道路法の認定を受けていないけれど『道路』と呼べるもあります。田舎へ行った際によく目にする「農道」や「林道」がその代表例でしょう。これらの道路も、誰の許可もなく通行することが可能です。
3.まとめ-私道と通行権-
今見てきたように、私道は個人が所有している道路ではありますが、個人が所有している全ての道路が私道ではありません。個人が所有していても、それが道路法による認定を受けていれば私権は制限され、所有者以外の人間も通行できるのです。
ですので、『私道』と言う問題について考えるためには、まず、その道路が道路法の認定を受けているかどうかの確認が必要となります。なお、建築基準法上の「位置指定道路」という概念や、登記記録の地目にある「公衆用道路」という概念は、道路法で定める道路とは別の概念です。
道路と一口に言ってもその概念は多義的です。私道の定義はさらに曖昧ですので、私道という言葉だけにフォーカスするのではなく、ご自身の問題が何なのかを明確にされると、私道問題については答えが見つけやすくなるのではないかと思います。
ご参考になさって下さい。