今日は、解雇の分類方法と概念について検討します。
今日、お客様から「諭旨解雇」という言葉の意味を聞かれました。
普段当たり前のように使っている概念であっても、その正確な定義を知らないことが少なくありません。新聞やニュースでよく見るこの「解雇」という文字について、詳しく見ていきましょう。本稿は、解雇の定義と解雇に付随する「懲戒解雇」などの概念について、2回に分けて検討していきます。第一回目の今日は、解雇の定義について検討します。
解雇の定義
まずは文字の定義を見てみましょう。
解雇
使用者が雇用契約を一方的に解除すること。使用人をくびにすること。
-出典 広辞苑 第六版 DVD-ROM版
雇用は、民法でも定められた契約形態ですが、民法の中では契約としての側面からしか規定がなく、実際上は使用者が被用者よりも優越的な地位におかれている実情を考慮したものではありませんでした。そこで、現在では労働基準法や労働契約法で民法に定められている雇用契約の修正が行われています。
一般常識としては、雇用契約を使用者から解除しようとする場合に「解雇」を使い、逆に、被用者から解除する場合は「退職」という言葉を用いますね。
労働基準法上の解雇
解雇という言葉は、労働基準法でも用いられています。最近の新しく制定される法律は第一章に使用する用語を定義することが多くなっていますが、労働基準法上で「解雇」そのものを定義した箇所はありません。
解雇に関する大きな条文は次の二つです。
(解雇制限)
第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
○2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
○2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
○3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
上記のとおり、労働基準法が解雇制限を規定しているのは、負傷や疾病の場合です。これでは、ちょっと不景気になればすぐに労働者を解雇できるとも考えられ、立場の不安定な労働者を守ることはできません。
そこで、判例が蓄積されていき、その判例を分かりやすく成文法化する形で「労働契約法」が平成19年に成立しました。
労働契約法では、解雇について、より踏み込んだ規定が設けられています。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
これは、簡単に言えば、解雇する権利は制限を受けるのであって、使用者の好き勝手に人をクビにすることはできないと言うことですね。
ここまでのまとめ
今回は、解雇の概念、法律上の定義などについて検討しました。
ところで、ここまでのお話しに「懲戒解雇」や「諭旨解雇」と言った言葉は一言もでてきてませんでしたね。そうなんです、これらの言葉は、法律上の定義はない、一般的な呼称になります。しかし、一般的とは言っても解雇には合理的な理由が必要とされている訳ですから、懲戒解雇も、就業規則でその詳細を定めているのが通常です。
次回は、そう言った解雇の種類について検討していきましょう。