実務では、条例にも規則にも細則にも載っていない細かな点が問題になります。載っていないから問題になる訳ですが、それらは「内規」と呼ばれる指針に基づいて考えていくというのが実際の流れです。
今日は、この「内規」について検討します。
- 内規には、二つの種類があると思える。
- 内規は、全て公開すべきである。
- 内規の制定、変更等に関する手続フローを開示すべきである。
- 簡易な「再審査請求手続」「異議申立手続」があれば便利だと思う
内規とは何なのか
当ブログお決まりのことですが、「内規」という言葉の意味にあたっておきましょう。
内部の規定。内々のきまり。
-出典『広辞苑 第六版 DVDROM版』
まんまですね。しかしこれは重要です。内部の規定とありますが、行政手続に内部も外部もない訳で、全ての規定は申請者に適用されることになります。ですので、申請者が関与する部分については、少なくとも内規で運用してはならないのではないでしょうか。
内規で条例と異なる運用ができるのか
本稿には「書こう」と思った遠因があります。とある手続で、条例に記載されている方法とは違った方法で申請するよう求められ、その根拠を確認したところ「内規」と言われたのです。
内規が条例に優先するというのは「いかがなものか」感があるのですが、そこで議論しても意味はないので、その場はその方式に従って手続を進めました。
けれど、これがまかり通るのであれば、条例が無意味になってしまいます。どこのどんな手続かを問題にするつもりはありませんが、内規に意味があるなら、それを反映するように条例を改正するというのが正攻法ではないでしょうか。
「内規」というのは文書として存在するのか
では、内規という文書は、行政庁に存在するのでしょうか。もちろん、それは機関や部署によってまちまちでしょうけれど、全ての内規が体系となって明文化されているようではなさそうです。もしかしたら「取扱要領」や「実施要領」と言った文言で文書化されているのかもしれませんし、メール連絡でもって内規扱いにしている、ということもあり得るかもしれません。
しかし、根拠を「内規」というのであれば、その根拠は明示できるものであるべきです。少なくとも、行政手続においては明示できなければならないと私は思います。
行政手続は、市民生活に身近な手続であり、相当数の件数を処理しなければなりません。これらは一律の基準でなされるべきですし、その基準は誰もが知り得るものでなければならないのではないでしょうか。
この意味で、私は「内規」と呼ばれる執務基準については、全て公開すべきであると考えます。
この考え方を突き詰めると、「内規」として成文化されている内規は公開されているものもありますし、私が今回論点としているのは、整理・明文化して公開されていないにも関わらず、担当者が「内規で決まっている」と言えてしまうような「内規」と言えそうです。
要綱について
要綱というのは、整備して公開されているものですから、ここで言う「内規」とは異なる概念として私は考えています。要綱を定めていても、それでも明確になっていない基準のことです。たとえば、京都府が公開している「建設業許可申請の手引き」は要綱的な性質を有していますが、そこに本人確認書類として「住民票記載事項証明書」という単語が出てきます。
これは、住民票の写しとは違った証明書として交付申請できますが、実務では住民票の写しで事足りています。この「事足りている」のは内規が存在するためではないかと思うのです。
内規を変更する手続の適正化
今はやりの「簡易宿所」の許可申請についても、用途変更で行うケースがほとんどのため、想定されていなかったケースが激増し、取扱が短期間で変わるという経験があります。一度他部署で協議したことについて再度の確認を求められたり、法規の解釈に幅が見受けられる印象を持つこともあります。
手続自体が新しいので、現場が混乱するのはある意味仕方のないことです。ただ、そういった部分を「内規」という概念で処理するのであれば、内規を変更する場合の手続フローを開示することが望ましいと思います。
内規に基づく取扱に関する不服申立方法の整備
行政処分に関する申立については行政不服審査法に定められていますが、内規は、その前段階で問題となることが多数です。
ですので、内規に基づいた取扱に関し、異議申立や再審査請求ができる手続があれば便利だと思います。これは、内規の適正化にも資するもので、行政担当者と実務家が力を合わせた、より実践的な内規の運営に役立つものとなるでしょう。
まとめ
内規というのは、実際の行政手続には広く用いられている概念だと思います。条例や規則で全てを定めるのは困難です。ですので、実務上の取扱要領のようなものはあってしかるべきと思います。ただ、それはやはり公開して共有していかないと、適正な手続を行うことができません。
是非とも行政における内規という論点については、ご担当者の皆さまにご検討頂きたいところです。