ありがたいことに、民泊や簡易宿所の許可申請について、おびただしい数のご相談を頂いております。
今日は、民泊のご相談を頂く前に、当事務所の執務姿勢をお知り頂きたく、本稿を出稿します。
安全を「ケチる」お手伝いは致しません。
ホームページの各所でご説明しているように、簡易宿所営業の許可を申請するにあたっては、消防工事を行い「消防法令適合通知書」を取得する必要があります。
この点について、相当数の皆さまが「自動火災警報装置なんてホームセンターで売ってるのをつけておいたらいいんでしょ?」と言われます。
ホームセンターに売ってる器具を取り付けるだけで検査に通るかどうかは別問題として、当事務所では、防火対策を軽視する事業者様のお手伝いはしておりません。
京都は他都市にも増して民家が密集し、道が細く消火活動が困難な街です。
外国人にとって魅力的に映る京町家ほど、消火活動が難しい場所にありがちです。そこをゲストハウスとして運用しお金を稼ごうとするのに、安全に対しては十分な配慮をしない…そのような事業に対する姿勢は、京都市民としても行政書士としても悲しく思ってしまいます。
消防設備の重要性は、第一にゲストの命を守ることだと思いますが、その他にも資産的価値のある建物を守り、隣家への延焼を防ぐためにもなくてはならないものです。
消火活動が困難な大阪の十三駅近くの飲食店街で大規模な火災が発生し、長期間に渡って阪急十三駅の西口自体が使えなくなった事は記憶に新しいでしょう。
スキーバスの惨事、雑居ビルの火災…人命にかかわったこれらの事態は、安全対策を軽視していたことに一因があることは明らかです。
火災が起こる確率は高いとは言えません。だからおろそかにしていいのではなく、確率がゼロではないからこそ、必要十分な備えをするべきなのです。
当事務所では、消火器の設置が法令上必要ではない場合であっても、消防署と協議して、事業主様に消火器の設置をお願いしております。
事業主様には、是非、法令遵守とは別の視点、ゲストの安全と京都の防火に寄与するという大局的な視点からも、ぬかりない消防設備の設置をお願いしたいと考えます。
「取らなければどうなりますか」はお答えできません。
厚生労働省が民泊の実態調査を開始するというニュースがありました(平成28年9月24日)が、各自治体では独自に調査して警告を発している所もあるようです。
京都市のみならず、隣接市においても保健所からの通知が来たということでご相談を頂くケースが増えています。また、京都市においては、違法民泊の現地調査時に「許可を取得するまで新規の予約受付はストップするように」との指導も出ているようです。
こういった状況の中でご相談頂く際にも「取らないで営業を続けても逮捕されることはありませんよね」と言った質問を受けることがあります。
このようなアプローチで事業を考えられるのであれば、ずっと闇民泊でなされれば良いと思います。
この国は法治国家であって、一定のルールに従って皆が生活し、経済活動をしています。「金儲けはしたいけど経費は抑えたい、ルールは守らなくていいものなら守りたくない」というお考えのお客様に、当事務所がお手伝いできることはありません。
まとめ
消防法令適合通知書交付申請手続は、基本的に当事務所では受託しておらず、設備業者さんに一任しています。
消防に関する諸届けは想像以上に多く、旅館業の許可申請の何倍もの書類が必要になります。また、消防法令や京都市火災予防条例に照らしての確認が必要で、専門的な知識が必要となります。
繰り返しになりますが、消防設備は人命と財産を守るなくてはならない設備投資です。
Airbnbの規約を極めて厳密に解釈すれば、消防設備の年次報告を怠っているだけで、Airbnb側は「法令違反があったので保証や保険は適用できません」と言い得ることができる。こういったリスクも考えなければならないでしょう。
本稿は、近時の相談事例の中で気になったことを事前にお知り頂きたいと考えて記事を作成しました。
中には私と見解の異なる行政書士さんもいらっしゃるでしょうし、様々な資格者にご相談なさった上で最適解をお探しになってください。