バイク事故では、交通事故の中でも後遺障害について特に留意しなければならない形態です。
転倒すると、複数の部位で強い衝撃を受けることが一般的で、その全てについて後遺障害を精査していく必要があります。
本稿では、バイク事故に関する論点を取り扱います。
- まず、自覚症状を全て洗い出すべきである。
- 診断と自覚症状の整合性を追求する必要があろう。
- 不足する点については、再度診断を受けるなどの対応をすべきである。
自覚症状と医師の興味
事例で考えていきましょう。バイクで国道を直進中、交差点内で対向車線から右折してきた乗用車と衝突、被害者は吹き飛ばされ、10日間意識が戻りませんでした。
整形外科領域では、右手指他、十数カ所を骨折していらっしゃいました。
意識が回復なされた後は、これほどの大事故にしては稀とも思えるほどにしっかりと回復していかれ、事故から7か月後にご相談を頂きました。
ご本人には、漠然とではありますが、物忘れが多くなったり、思い出せないことがあるといった認識があったそうですが、普段の生活にはそれほどの差し支えがなかったため、治療・リハビリは整形外科領域に限ったものでした。
これはある意味で当たり前のことです。
なぜなら、整形外科医の担当は整形外科領域の事のみであって、脳機能障害を見抜いたり、それについてアドバイスすることは整形外科医の職務の範囲とは言えないためです。
しかし、被害者にとって、整形外科医はあくまで「お医者さん」です。ですので、脳機能に不安があれば、それについて適切なアドバイスがほしい。たとえ確定診断ではなくても「脳神経外科で見てもらっておいた方がいいですね」の一言がほしいのです。
けれど、交通事故治療において、整形外科側からそのようなアドバイスがなされることはほとんどありません。
繰り返しますが、整形外科医の興味はあくあで整形外科領域の治療であって、それ以外は専門外なのです。また、ただでさえ書類が多い交通事故被害者は、できるだけ早期に治癒してほしいというのが勤務医師の率直な想いでしょう(もちろん、それが患者様のためでもあります)。
その後の経過
さて、7か月後にご相談を受けた際、整形外科領域での後遺障害についてはもちろんのこと、記憶や感覚に関する聴き取りから、高次脳機能障害に関する検査を受けるべきと判断し、検査を手配しました。また、視力障害が疑われたため、交通事故後遺障害に精通した眼科での検査もアレンジしました。
そのお客様は「もし相談していなかったらどうなっていたのかと考えるとちょっと怖い気がします」とおっしゃっていらっしゃいました。現在被害者請求中ですが、10日間意識を失っていたというほど危険な状態だった損害に対し相応しい補償を得られるよう最善を尽くしました。
バイク事故の問題点
この事例から分かるように、バイク事故では複数の部位を損傷していることが多くありますが、物理的に考えても頭部を地面にぶつけている可能性は高いという前提で聴き取りをしていきます。
ところが、医師は自分の専門分野に関する傷病を診断し、治療をしていくことが仕事であって、「どの程度不具合が残っているか」ということを証明するのは仕事ではなく、むしろ証明したくないというのが人情というものでしょう。ましてや、他の領域に関する傷病など、興味がなくて当たり前、という前提から出発していくことが大切です。
ですので、特にバイク事故で後遺障害を立証していくにあたっては、できるだけ早期に専門家に依頼なさることが良いと言い切ることができます。
まとめ
「交通事故後遺障害」の立証という考え方には二つの方向性があります。一つは、他覚所見と自覚症状について整合性ある障害について必要な資料を揃えることで、これはいわば、MRIを依頼したりという、普通にできることです。
もう一つは、他覚所見と自覚症状が紐付いていない、いわば隠れた「後遺障害として認められる要素」をしっかりと探しだし、その医学的根拠を取り付けて、最終的な補償へと結びつけるという仕事です。
当事務所では、この「隠れた障害」「見逃されている障害」をあぶり出すことを重視した相談を行っています。バイク事故でご自身の症状に疑問を持たれた方、今後の流れに不安を感じていらっしゃる方は、どうぞお気軽にご相談くださいませ。