2018年6月15日の条例改正に合わせた京都市で簡易宿所を開業する際の玄関帳場に関する最新情報です。
- 原則帳場は必要である。例外は京町家として認められた場合。
- 帳場は施設内の他、施設外に設けることができる。
- 施設外帳場を使えるのは「ゲスト1組で定員9名以下の一棟貸し」となる。
- つまり、2組以上のゲストを入れようとする場合、施設外玄関帳場は使えない。
- 施設外玄関帳場は施設からおおむね10分以内に移動できる場所。
- 面積2㎡以上は変わらず。その他要件に変更あり。
- ゲスト滞在時は、帳場(施設外帳場含む)に駐在の必要あり。
- かけつけ要員にも要件あり。
帳場、やっぱり必要みたいです。
京都市で簡易宿所を開業しようとする場合、どうしたって玄関帳場は必要になるようです。ただし、以前と同様に、京町家として認定された場合は帳場不要となります。ただし、京町家の場合は施設前や施設玄関での鍵の受け渡しとなり、緊急時に速やかに対応できるよう、施設へおおむね徒歩10分で到着できる距離に管理者が駐在する必要があります。
この「おおむね10分」は、要綱で800mに読み替えられており、実務的には距離が問題になることから、以下では、この範囲の要件は全て800mに置き換えて記載します。
新しい概念「施設外玄関帳場」
条例改正により、施設内だけでなく、一定の要件を満たした施設は施設外に帳場を設けて良いことになりました。その要件とは以下のとおりです。
- ゲスト1組の受け入れでの一棟貸し
- 定員9名以下
- 出入口にカメラ設置など、必要な附帯設備を整えること
つまり、施設外玄関帳場を設けられるのは、客室数が1室の場合であって、2室以上の場合は無理、ということになります。
施設外玄関帳場の要件
施設外玄関帳場の要件もあります。まず、大切なことは、施設外玄関帳場はあくまで旅館業施設である、という点です。つまり、様々な法令での「旅館」関係の規定をクリアしている必要があります。京都市の条例についても適用を受けますので、住居系施設と施設外帳場の動線は分離できている必要があります。例で言うなら、ワンルームマンションの1室を施設外帳場にはできない、ということになります。
面積やカウンター幅などの要件は施設内の帳場と同じですので後述します。
次に重要な点は、距離の問題です。施設から移動距離にしておよそ800mというのが目安です。これには若干の幅があるようですが、880mが限界と聞き及んでいます。
なお、施設外玄関帳場は共同で使うことも認められていますので、A社のゲストハウスとB社のゲストハウスの施設外玄関帳場として1つを共用することが可能です。
帳場自体の設備基準
- 面積は2㎡以上。
- 60センチ未満の狭小部は面積に算入されません。
- 高さ180センチ未満の部分は面積に算入されません。
- 開口部は1.1メートル以上であればよい。
- 横幅は原則1メートル以上、ただし、定員9名以下なら0.6メートル以上。
- カウンターの奥行きは0.3メートル以上。
- 駐在するんだから排泄のこと考えてくださいね。
この中で大きく変わったのは、開口部がフロア高の2分の1以上という忌々しい縛りがなくなった点です。
ただし、高さ180センチ未満の部分が面積算入されない、というのは要注意です。帳場は階段下に設けることも少なくありません。そういう時は180センチ未満の所を省いて面積計算する必要があります。
そして、今後帳場には「駐在」しなければなりませんので、せめてトイレは作ってね、という努力規定がおかれています。
帳場に関連した人の要件
さて、今回の条例改正で最も大きなインパクトがあったのは「帳場駐在」です。
既存施設については2020年3月末まで経過措置がありますが、これから計画する施設は開業したら即時、既存施設も2020年4月以降、帳場への駐在が求められます。
つまり、ゲスト滞在時は、帳場と呼べる所のすぐ近くにはスタッフが駐在している必要があります。「すぐ近く」と書いたのは、施設内に帳場がある場合、施設内であれば帳場以外の部分での駐在も認められるからです。
一方、施設外帳場の場合、京都市さんの見解では「出入りを常時監視」することになるので、施設外帳場自体に駐在が必要とのことです。
施設外帳場を使う場合の駆け付け要員
さて、施設外帳場を使う場合、施設外帳場以外の場所にスタッフを待機させて緊急時に対応させることができます。
この時、その待機場所は、やはり施設から800mの距離内であることが必要です。しかし、この待機場所は旅館業施設ではないので、スタッフ個人の自宅であっても差し支えないとされています。
もちろん、施設外帳場に駆け付け要員を待機させることも可能です。ところで、この原則論で考えると、施設外帳場を使う場合、カメラ監視員を駆け付け要員の最低二人が必要になってきますが、実際、原則は二人が想定されているそうです。ただし、例外も考えられるということで、このあたりは制度が本格的に運用されていけば明確になってくるでしょう。
まとめ
以上、2018年6月の条例改正に基づく帳場の要件について概観しました。この施設外帳場はまだ始まったばかりの制度で、現場においても解釈で混乱をきたしている場面がありました。ネット上の解説や伝聞を鵜呑みにすることなく、案件毎に担当者に確認なさることが最善の方法です。
ご参考になさってください。