- 住宅を使う事になります。
- 今のところ空いている部屋を使います。
- 消防法令適合通知書を得る必要があります。
- 近くに管理者を置く必要があります。
京都市内で民泊新法の届出を経て民泊を開業するためには、幾つかのポイントがあります。これは、住宅宿泊事業法の他に、京都市の独自条例をカバーしなければならないためです。
以下、基本的なチェックポイントをご案内致します。
- 届出住宅の位置関係による要件
- 用途地域による要件
- 道幅による要件
- 管理者の設置
1.届出住宅の位置関係に関する要件
住宅宿泊事業法による届出には、三つのカタチ=方式があります。
- 家主同居型
- 家主不在型
- 家主非同居だけど、管理業者不要型(筆者独自の命名)
これらを順に見ていきましょう。
家主同居型
事業主がその家に住んでいる状態で、空いている部屋を貸し出す場合、このタイプで届出することになります。
昔の下宿をイメージすれば分かりやすいでしょう。お子さんが独立して家を出ており、部屋が空いているケースなどでのご相談があります。
この場合、事業主様が自分で管理することができるので、管理会社=住宅宿泊管理業者を使う必要はありません。ですので、書類の量も一番少ないシンプルな形の申請になります。
家主不在型
事業主はその家に住まず、住宅(の一部)を貸し出す場合、このタイプで届出を行います。
別荘の全部や一部を貸し出す場合、投資物件として所有している賃貸マンションの一室(或いは全室)を貸し出す場合が想定されています。
この場合、法律は「事業主さんは難しい管理はできないだろう」と勝手に決めつけている節があり、国土交通省に登録されている管理業者を使わなければなりません。また、投資物件で届け出る場合、届出が受理された後も「賃借人を募集するための広告」は継続する必要があります。つまり「民泊に使うのは、借り主がいない間だけにしようね」というのが法律の考えている世界観ということになりますね。
家主非同居だけど、管理業者不要型(筆者独自の命名)
さて、これが実務で一番問題になるタイプです。よくある形態として、同じ敷地に自宅と賃貸マンションがある、というケースです。
この場合、私たちの認識ではこのタイプでの届出がもっとも相応しく思えます。ところが、京都市さんでは「騒音を確認することができない」という理由で家主不在型での届出を促されるケースが散見されます。
京都市さんが実際に窓口でなさっていた説明は次のようなものです。
上の図で、家主が自分の所有するマンションの202号室に住んでいたとしましょう。この時、他の8室を届出しようとする時に、上下左右の部屋は家主非同居型(つまり管理業者不要)でできるけれど、斜めの部屋は不在型(つまり管理業者必要)で届出してね、ということが言われていたのです。
さらに実務で問題になっているのは、このような取扱が少なくとも窓口では二転三転していて、結局離れていても(斜めのような場合でも)届出が受理されている事例が出ている、ということでしょう。
上の事例で言うなら、家主が住む202号室を取り囲んでいる8室全てを管理業者不要で届出可能にしなければならないですし、そのあたりは事例毎に対応を考えて交渉しているのが実情です。
管理業者と契約すると、月額固定費や売上に連動した割合での報酬を請求されるのが一般的です。家主が届出住宅と同一敷地や隣接敷地に居住している場合は管理業者不要を前提に考えるのが妥当と弊所では考えており、それを前提にした交渉は行うように努めています。
2.用途地域による要件
住宅宿泊事業法では上限180日での営業が認められていますが、京都市は住居専用地域に制限を設けており、用途地域が「住居専用地域」の場合、上限が60日となります。ただし、家主同居型で行う場合や京町家認定を受けた建物である場合は例外的に180日での営業が認められています。
3.接道に関する要件
京都市は路地が多くあるため、路地に関する制限があります。
届出住宅の敷地が建築基準法上の道路に接していない場合、建築基準法上の道路までたどり着くために通る部分(避難通路)の幅が1.5m以上ある必要があります。1.5m未満の場合、厳しい制限が設けられており家主同居型でない限り届出をするのは難しくなります。ただし、届出住宅と同じ町内に管理者を置くことのできる場合は定員5名以下で届出できる場合があります。ですので、避難通路が1.5m未満の場合は「同居か同町内に管理者を置く」というのが原則になります。
なお大切な注意点があります。この1.5mというのは、障害物を除いた通路幅員です。道は1.53mあるけれどクーラーの室外機がおいてあったり、植木鉢があってそこを除いて測ると1.48mだった、という場合は1.5m未満とされてしまいます。丈の低い植木鉢など、容易に移動できるものは交渉の余地もありますが、クーラーの室外機がおいてあった場合は障害物とされる可能性が高いです。ですので、1.5mが怪しい場合は先に専門家に相談なさるのが無難です。
4.管理者の設置
京都市で届出を行う場合、緊急時に対応するための「現地対応管理者」を設置する必要があります。これは法人でも個人でも良いのですが、大きく二つの要件があります。
(1)移動距離で800m以内に駐在していること
現地対応管理者は、届出住宅にゲストが宿泊している時は、その届出住宅から移動距離で800m以内の場所に駐在している必要があります。直線距離ではなく、移動距離ですので留意願います。弊所では、相談時にグーグルマップで確認する他、届出前にはGPSを装着した状態で実際に移動してその記録を取って保管し、必要に応じて提示できる準備までは整えています。
(2)管理者一人につき宿泊室5室までの管理となること
現地対応管理者が一人が管理できるのは、宿泊室ベースで5室までとなります。たとえば寝室2室の2LDK3軒で届出しようとする場合、宿泊室は6室になりますので現地対応管理者は2名必要となります。
5.その他の留意事項
届出をするためには、その前提として消防検査を受けて合格証(消防法令適合通知書)をもらう必要があります。これは多くの場合消防設備業者さんに依頼することになるでしょう。非常用照明は通常の住宅では必要ない部分に「つけろ」と言われますので、消防関連の工事は必ず必要になります。また、地域によっては「水質汚濁防止法に基づく届出」が必要となります。
まとめ
京都市さんが発行されている「手引き」には上記の説明がより詳しく書かれています。しかし、説明というのは難しいもので「詳しく説明しようとすればするほど分かりづらくなる」場合が少なくありません。
ですので、実務家の経験でまとめていうなら、届出住宅にあてはまるかどうかは次の順序で検討していくと良いでしょう。
1.(前提)普通の家は大抵対象になる。
2.用途地域を確認して、住居専用地域以外であれば180日の営業が可能になる。
3.道幅を確認して、1.5m以上あれば大丈夫。ただし、障害物の有無は絶対に確認必要。
4.以上の要件をクリアしていれば、届出形態を確認。居住場所と計画住宅が同一敷地にある、または隣接している場合、管理業者不要でいけるケースもあるので専門家に相談するのが得策。
届出は事業主様ご本人でもできます。自分でやってみよう、とお考えの場合は京都市さんに直接お問い合わせなさるのも方法です。また、京都市さんに相談なさる前に問題点を知っておきたい場合は、当事務所などの専門家へご相談なさると良いでしょう。